思想の読み書き

思想と哲学

『千のプラトー』訳の検討

河出文庫版、3分冊の『千のプラトー』を、原文を見ながら、オンライン読書会で読み進めている。

 

文庫化にあたって訳文の検討がなされたと言うが、いろいろ不可解な点や単なるミスと思われる所が散見される。

 

気がついたところをメモしていきたい。

友情以外の生ー『全体性と無限』

ブーバーについて論じる箇所。

 

熊野訳

〈私ーきみ〉によっては、友情以外の生のかたちを説明することはできない……つまりエコノミーを、ものとの関係を代表する、この幸福の追求を説明することができないのである。

上 123ページ

 

Je-Tu……ne permet pas de rendre compte (si ce n'est que comme d'une aberration, d'une chute ou d'une maladie) d'une vie autre que l'ami­tié : l'économie, la recherche du bonheur, la relation représentative avec les choses.

 p.65

 

 合田訳

私と君は家政、幸福の追求、事物との表象的関係といった友情以外の生を解明することができない……。

91ページ

 

事物との関係性を、幸福の追求と並列すると読むか、幸福の追求に、ものとの関係性が代表されると解釈するか。

 

合田訳の方が、すっきりしていると個人的には思う。熊野訳の方が、訳者の解釈が強く出ている。

 

科学的認識の位置付けについて、微妙に解釈が分かれそうなところ。

全体性と無限 訳の検討

原著と照らし合わせながら、レヴィナス『全体性と無限』を読むオンライン読書会をしている。

 

岩波文庫熊野純彦訳で読書会をしているが、訳に疑問があるときなど、それ以前に出ていた国文社の合田正人訳と見比べている。

 

熊野訳を見ていると、合田訳を見ながら訳稿を作っていると思われることもある。

 

原文の解釈が食い違う場合もある。

 

気になった所をメモしていきたい。