思想の読み書き

思想と哲学

アラン『小さな哲学史』ピュタゴラスー試訳

アラン『小さな哲学史』(みすず書房)として訳されている Abrégés pour les aveugles. Portraits et doctrines de philosophes anciens et modernes (1942) の、ピュタゴラスのところですが 6頁のあたりの訳文がどうにもよくわからないので、原文に当たって…

増田四郎と随想全集

いままでこのブログでふれてきたオンライン読書会では、その後カントを読んだりしていたが、紆余曲折あって、今はフロム『自由からの逃走』を読んでいる。 その関連でヨーロッパ中世の歴史について学び直したくなり、20年ぶりに増田四郎の本を手に取った。 …

『全体性と無限』訳語メモ 岩波文庫p.191

熊野訳で気になったところを合田訳と照らし合わせてメモしていく(再開)。 「ことばを語ることはひたすら共通性を創設する。」 原語は「 communauté」(p.101) 合田訳では、「共同性」。合田さんは、一種説明的な意訳をしているらしく、原文を補足するような…

ヌクレイン 補足の補足

千のプラトー、守中訳で、塩基配列に該当する内容に核蛋白質(ヌクレイン)という訳語を採用しているのは不可解で、時代錯誤だという話をしてきた。 http://readthink.hatenablog.com/entry/2016/12/16/203908 もう一箇所、ヌクレインと訳された箇所があったの…

主題化されたものの認識(2) invocation はどんな祈りか

レヴィナス『全体性と無限』について。 前回コメントした箇所の続き。 La connaissance du thématisé n'est qu'une lutte recommen­çante contre la mystification toujours possible du fait; à la fois, une idolâtrie du fait, c'est-à-dire une invocati…

出口顯『レヴィ=ストロース まなざしの構造主義』

https://twitter.com/sacreconomie/status/794827016973393920 このツイートを見て、読んでみた。 来日したレヴィ=ストロースが、世阿弥に触発されて本のタイトルをつけたり、伊勢神宮の建物から論考の着想を得たりしていたと言ったエピソードや(第1章)、…

主題化されたものの認識(1)

レヴィナス『全体性と無限』を読んでいる。以下引用。 主題化されたものの認識は、事実についてはつねに可能な神秘化に対して絶えず繰りかえされる闘争にすぎない。 熊野訳、岩波文庫 上 114ページ ここで神秘化と訳された原語は、mystification だった。 La…

ヌクレインとヌクレオチド 補足

前の記事では、他のページにも同じ訳語の問題が見られることに気づいていなかったので補足する。 ヌクレインとヌクレオチドー『千のプラトー』 - 思想の読み書き 「本質的なのは、核蛋白質複合体のシークエンスの線形性である」 『千のプラトー』 上 132ペー…

形態学 個体発生と系統発生

『千のプラトー』でジョフロワ・サン=ティレールの話が出てくる。 科学史的に、ジョフロワについて教えてくれるコンパクトな本がないか探していて見かけた次の本。 形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ (サイエンス・パレット) ヘッケルがとなえた、個…

ヌクレインとヌクレオチドー『千のプラトー』

千のプラトーの、第三のプラトー(第三章)訳文について、疑問点をあげる。 この章、訳の担当は、守中高明氏 「例えば核蛋白質の配列は、一定の相対的に不変な表現と不可分に結びついており、この表現をとおしてそれら個々の配列は有機体を構成するさまざま…

『千のプラトー』訳の検討

河出文庫版、3分冊の『千のプラトー』を、原文を見ながら、オンライン読書会で読み進めている。 文庫化にあたって訳文の検討がなされたと言うが、いろいろ不可解な点や単なるミスと思われる所が散見される。 気がついたところをメモしていきたい。

友情以外の生ー『全体性と無限』

ブーバーについて論じる箇所。 熊野訳 〈私ーきみ〉によっては、友情以外の生のかたちを説明することはできない……つまりエコノミーを、ものとの関係を代表する、この幸福の追求を説明することができないのである。 上 123ページ Je-Tu……ne permet pas de ren…

全体性と無限 訳の検討

原著と照らし合わせながら、レヴィナス『全体性と無限』を読むオンライン読書会をしている。 岩波文庫の熊野純彦訳で読書会をしているが、訳に疑問があるときなど、それ以前に出ていた国文社の合田正人訳と見比べている。 熊野訳を見ていると、合田訳を見な…