思想の読み書き

思想と哲学

ヌクレイン 補足の補足

千のプラトー、守中訳で、塩基配列に該当する内容に核蛋白質(ヌクレイン)という訳語を採用しているのは不可解で、時代錯誤だという話をしてきた。

http://readthink.hatenablog.com/entry/2016/12/16/203908

 

もう一箇所、ヌクレインと訳された箇所があったのに言及し忘れていたので、再度補足する。

内容的には同じことの確認である。

 

「一方には蛋白質単位のシークエンス、他方には核蛋白質(ヌクレイン)のシークエンス」(上 p.98)

 引用元では、括弧内はルビとなっている。

 

おそらく、守中訳では、ここでnucléiquesをヌクレインと解釈し、核蛋白質と訳すという方針を示そうとしているのだろう。

 

原文は以下の通り。

 

 d'une part la séquence des unités protéiques, d'autre part celle des unités nucléiques (p.57)

 

すでに指摘した通り、nucléiques は、核の、という形容詞で、ここでヌクレインと訳すべき理由はない。

 

原文で、unités、訳語で単位とされている言葉は、遺伝子暗号において、核酸三つの配列が単位となって、あるアミノ酸を指定していることを意味している。

 

参考

 http://www.toho-u.ac.jp/sci/biomol/glossary/bio/genetic_code.html

 

一列に並んだ核酸配列において、三つ一組となった塩基の順番がアミノ酸の配列を表し、その順番に結合されたアミノ酸の糸が、折りたたまれ立体構造をなし、生体を構成する蛋白質を形作る。

 

ドゥルーズガタリの原文は、そういう標準的で基礎的な分子生物学の知識を踏まえて書かれている。

 

ヌクレインなどを持ち出して解釈する余地はない。